悔いてからでは遅い、終活の大切さを実感

認知症の発症、身体機能の低下で寝たきり状態等になり、意思疎通ができなくなってしまった状態での介護は、家族に大きな負担となっているのではないかと思います。
介護の負担には大きく分けて身体的負担と精神的負担があると思うのですが、身体的負担は介護保険等を利用することで解決することが出来る場合もあるのではないかと思います。
しかし精神的負担のなかで「今になってはどうにもならない心の問題」があることが今一番気になっていることです。

医療機関での介護者との関わり

私の勤務先である医院では、在宅医療(訪問診療・往診)を地域の中でも特に力を入れて行っています。
現在、30~40人位の方の訪問診療をしているのですが、外来診療とは全く違う関わりを職員全員が共有しなければなりません。
一番違う関わりというのが、患者さんご本人だけではなく、家族の方との関わりを深く持っていかなければならないということです。
外来診療ではあまり聞くことがない、患者さんの経歴、居住環境、家族の方の職業や親族関係のことまで場合によっては立ち入らなければならないこともあります。

総合病院等は相談窓口に担当者がいて家族等の相談を受けていますが、私の医院では主に事務職員がその窓口になっています。
家族の話しを聞き、医師との話しの仲介役をしながら、外部の関係者、例えばケアマネ・訪問看護・訪問介護・行政の職員の方々への連絡や調整などをしています。

■訪問診療とは
診療計画を予め立て、その計画に沿って医師が患者さんの家等に行き診療をおこなうこと
■往診とは
緊急時等、患者さん等からの連絡をうけ、医師が患者さんの家等に行き診療をおこなうこと

在宅医療の終末期(ターミナル)

多くの方の本心は自宅で最期を迎えたい思っているというのは前記事「平穏死10の条件」を読んでのなかでも書いてありますが、そのためには在宅医療はなくてはならいものだと私は思っています。

ターミナルになったとき、医師は家族に今後のことを話します。そして24時間緊急対応についても再度確認をし、家族も最期まで在宅で看取ることを希望します。
しかし、そんな時でも異変があるとやはり家族は救急車を呼んでしまうことが多いのです。
分かってはいても、緊急時はやはり気持ちと行動が伴わなくなってしまうのでしょう。
在宅で看取るというのは家族にとって相当な覚悟がいることなのかもしれません。

延命治療の家族の選択

入院されている家族からの相談で一番多いのは、延命治療に関することです。
入院先医療機関で胃ろうなどの延命治療を勧められた場合、家族はその選択をしなければなりません。
その選択をすることが家族の心の負担のなかでもっとも辛いことなのかもしれません。

先日2人の患者さんのご家族の方が続けて同じように胃ろうに関する相談に来ました。
1人の方のご家族はすでに胃ろうを決め、退院後の在宅医療に関してのお願い、そしてもう1人の方のご家族はこれから胃ろうの選択をしなければならないという相談でした。どちらの方も入院する前まで私の勤務している医院で在宅医療を受けていた方です。

その相談のなかでどちらの家族の方も言っておられたのは「こんな選択を私達がしなければならないことになるのなら、もっと早く本人の気持ちを聞いておけばよかった」という言葉でした。「今になってはどうにもならない心の問題」です。
ご家族の話しを聞き、私は改めて延命治療の選択を家族がしなければならないことが家族の心の負担を大きくしていることを感じました。

こんな時、終活(自分のこれからの生活、そしていつか来る最期の日について事前に備えておく活動)が出来ていれば良かったと思ってしまいます。

在宅介護

長期のわたる在宅介護を1人で抱え込んでしまうと介護をする人は肉体的、精神的負担になってしまいます。
介護者の方の表情が日に日に暗くなり、また体調不良を訴えることもあります。
介護は適度に力を抜き、一人で抱え込まないようにしなければ続けることが困難になってしまうのでしょう。

また、介護されるご本人自身も自分の気持ちを家族に話さないという話もよく聞きます。
「家族に迷惑を掛けたくない」という思いがあるのに家族なら自分の気持ちを分かってくれるだろうと思い、そのまま意思表示が出来なくなってしまうことで、家族間の関係を崩してしまう原因になることもあるということを私自身目の当りにしています。

行政書士になって私ができること

私が行政書士を目指したのは医療現場での経験を直接行政書士の業務に結び付け何かできると思ったからではありません。
今までとは違う生き方を目指して行政書士試験を受験したのですが、どうしても今まで医療現場で見てきて感じたことを違う形で活かしていきたいと思ってしまいます。それが終活に対する広報活動です。

終活に対してもっと多くの人が関心をもっていただければ、家族との関係もより良くなっていくのではないかと思うからです。
私は終活支援を行政書士業務に取り込んでいくことで、医療現場(医療事務員)では出来なかったことが行政書士としてできるのではないかと思っています。
業務に関して今までより少し具体的なイメージを持つことが出来てきたと思っています。だからこのまま自分が思うように進んでいってみようと思っています。

記事:横山 弘美

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